で、伝九郎社長!
会話の内容は聞かせてもらったぞ。何やっとんじゃお前らは。
二人:「う”っ・・・・。」
小暮:「わ、私が万事うまくやっておきますので・・・」
伝九郎:「ジジイよ。その3万円、わしが預かろう。」
小暮:「は?!はい・・・」
伝九郎:「吉五郎。お前、この前も取引先で問題起こしたそうじゃな?」
吉五郎:「!・・・いや、、、はい・・・」
小暮:「あ、あの。こいつは、昔から性根はまっすぐなんでございます。裏表のない、いいやつなんですが、少々短気なところがありまして・・・いや、私も口酸っぱく言ってはいるんですが・・・。」
伝九郎:「ふむ。どうして短気をおこしたのじゃ?」
吉五郎:「や、奴らの態度が気に食わなかったんです。だって、おかしいじゃないですか。モノを売るやつがいて、買うやつがいる。俺たちはそれを運んでいる。本当だったら、売り手・買い手双方に感謝されるべきじゃないっすか。なのに、”忙しいから自分で卸しとけ”とか、卸したら卸したで”そんな置き方じゃダメだ”とか、挙句の果てには”出禁にするぞ”なんて言いやがって。」
吉五郎:「だから、”出禁にするならしやがれこの逆蛍※!ありがとうの一言くらい言えねぇのか!”って、言ってやったんす!」
(※逆蛍(ぎゃくぼたる)・・・頭部が光っている人の意)
伝九郎:「ふむ。確かに、今の物流業界は、ドライバーの立場は弱い。お前のくやしい気持ちもわからんでもない。下に見られるのはおかしい。だが、上でもないぞ。対等なんじゃ。」
伝九郎:「それに、お前はスッキリするかもしれないが、お前だけの責任じゃないんだぞ。会社の仲間みんなの責任になるんじゃ。その場の怒りに身を任せてはいかん。」
吉五郎:「うっ・・。そうですけど・・・。」
伝九郎:「お前の真っすぐさはいいところなんじゃがな。」
吉五郎:「ふぁい・・・」
伝九郎:「AKIRA。お前もお前じゃ。」
AKIRA:「う”っ・・・。」
伝九郎:「せっかく山に登り、修行したというのに、何やっとんじゃ。独立を目指してるんじゃったら、もっとすることがあるじゃろ。年下がどうこうじゃないだろ。」
AKRIA:「ふぁ、ふぁい・・・。」
伝九郎:「お前がひたむきに努力してるのは分かる。もったいないという話じゃ。」
伝九郎:「さて・・・吉五郎が落としたこの3万円をどうするかじゃが・・・両者とも、この3万円は要らんと申すな?」
二人:「ふぁ、ふぁい・・・・」
伝九郎:「ジジイよ。こ奴らはアホじゃが、真面目さとひたむきさはあるな。」
ジジイ:「は!・・はい!性格はちょっとひねくれてますが、一生懸命やっております。」
伝九郎:「では、こうしよう。この3万円に、ワシの財布から出した1万円を足す。これで4万円じゃな。」
ジジイ:「はぁ・・・?」
伝九郎:「AKIRA、吉五郎。それぞれ2万円ずつ受け取れい。」
二人:「へ?こ、これは?」
伝九郎:「うむ。AKIRAよ。おまえは拾った金をそのままもらっていたら、3万円だった。じゃが手元には2万円。都合1万円の損じゃな?」
AKIRA:「はぁ・・・?」
伝九郎:「吉五郎。お前も届けられた金を貰っていたら、3万円だったな?これも、1万円の損じゃ。」
吉五郎:「はぁ・・・?」
伝九郎:「ワシは財布から1万円出した。お前らはアホだが一生懸命さはある。その褒美じゃ。ワシも1万円の損じゃな。」
伝九郎:「3人が1万円ずつ損をする。”三方1万損”じゃ。どうだ?これで丸く収まったとは言えんか?」
二人:「???」
伝九郎:「3方が1万円ずつ損しとるじゃろ。上も下もない。対等じゃな。」
AKIRA:「え~と、・・あれ?2万円もらってるから、2万円の得じゃなくて・・?あれ?」
吉五郎:「う~ん・・・?どういうこっちゃ?」
小暮:「アホ!伝九郎様の名裁き(めいさばき)じゃろうが!黙ってありがたくもらっとけ!家に帰ってから考えろ!」
二人:「あ・・・ありがとうございました!!」
伝九郎:「うむ。むかっ腹が立った時、その2万円を思い出せよ。これにて一件落着だな。」
小暮:「あ、あの・・・私もスマホが壊れてしまい、修理代が掛かりそうなんですが・・・・(おどおど)」
伝九郎:「ん?なんか言ったか?」
小暮:「なんでもないです。」
伝九郎:「そうじゃ小暮、こいつらの仲直りのしるしに、メシでもつれてってやれい。わしゃこれから歯医者にいく。」
小暮:「・・へ?あ、ああ。もちろんそうしようと思っていたところです。」
・・・
つづく