ザッザッザッ・・・。
三人:「ハア・・ハァ・・・。」
珍:「もう少しスピードを上げて。急ぎなさい。」キリッ。
劉:「こいつ、車(牛)に乗ると人格変わるんだよ。」
AKIRA:「分かれ道・・・。」
珍:「こっちです。」サッ。
AKIRA:(よく道がわかるな・・・・)
劉:「すごいだろ?珍はこのへん一帯の山、道、木の一本一本隅々まで覚えてるんだ。」
水木:「えっ?!」
劉:「6歳の時から、珍は配車係として働いていたんだ。今は完全に”配車モード”だよ。」
劉:「珍は戦場を”盤面(ばんめん)”として捉えている。何千・何万通りのルートから、最適な道を選んでいるんだ。長年の配車業務で培ってきた経験とカンがなせる技さ。もちろん、敵の動きもすべて計算ずみだ。」
珍:「ここを抜ければ安全地帯だ。急ぐのだ。」
AKIRA:「ハァハァ・・・・。そ、そんなこといっても」
水木:「僕も珍さんに賛成だな。早いとこ抜けましょう」
AKIRA:(お前は歩いてねーじゃねーか!)
劉:「しっ!・・・何か聞こえないか・・?」
・・・・?。
珍:「この足音・・気配・・・敵だ!隠れよ!」
AKIRA:「えっ?!」
AKIRA:「て、敵・・・かわしてるんじゃないのかよ?!」
珍:「予想外の出来事です。再ルートを計算します・・・。」
珍:((なぜ、こんな後方に敵の姿が・・・?もしかして・・・・))
~そのころ、敵陣~
<金国 野営地>
<金国 五千人将 剛毛(ごうもう)>
剛毛:「そろそろか・・・・。」
バサッ。
<剛毛隊 軍師 孔明(こーめー)>
孔明:「奇襲作成についてのご報告です。」
剛毛:「うむ。密かに出撃した別部隊が、補給部隊をつぶす作戦よ。」
剛毛:「して、どうだ、首尾(しゅび)は。」
孔明:「・・・は!作戦はうまくいっております。ほぼ成功といっても過言ではありません!」
剛毛:「成功したのか?」
孔明:「・・・は!ほぼ八割方成功しております!」
剛毛:「・・・ん?ということは、まだ成功していないんだな?」
孔明:「・・・は!ほぼほぼ成功しておりまして、あとは補給部隊を補足し、攻撃するのみとなります!」
剛毛:「(イラッ!)・・・じゃあ、その補給部隊は補足したんだな?」
孔明:「・・・は!いえ、補足はしていませんが、進捗としては補足と攻撃を残すのみとなります」
剛毛:「(イラッ!)・・・じゃあ、まだ成功してないってことだな?補足もしてねーんだな?失敗ってことか?」
孔明:「・・・は!・・・・・・・」
剛毛:「どうしたっ!!成功したのかしてねーのか!!」
ズルッ。
孔明:「ブッ?!」
剛毛:「答えろ!」
孔明:((や・・・やばい・・・。剛毛軍の掟・・・・剛毛さまの”御頭具”を指摘した者、極刑に処す・・・どうしよう・・・))
剛毛:「どっちじゃー!!はっきり言いさらせー!!!」
パカッ。
孔明:((ひーー!!))
孔明:「・・・申し訳ありません!まだです!成功してません!!!」
剛毛:「そうじゃろ!!そんな事かと思ったわ!!最初からそうやって言え!!」
剛毛:「お前らじゃラチがあかん!ワシが直々に出る!!」
スポッ。
孔明:((ほっ・・・・!))
剛毛:「ほっとしてんじゃねーー!!」
パカッ。
孔明:((ぎゃーーー!!!))
剛毛:「出陣じゃあ!!!」
~そのころ~
珍:(先ほどの部隊・・・やはりおかしい・・・。)
ぴたっ。
劉:「・・・お、おい、珍どうした?」
珍:「引き返しましょう。金軍が、我々をたたくために部隊を出している可能性があります。そうなった以上、安全なルートは見つかりません。今回は諦めましょう。」
AKIRA:「え・・・?部隊・・・?」
水木:「そ、そんな!・・・珍さんの言う通り、今日は諦め・・・」
劉:「・・・いや、」
劉:「それはできねえ。」
珍:「へ?な・・・なぜです・・・?」
劉:「それは俺らが運送屋だからだ。」
珍:「・・・・・。」
劉:「俺ら運送屋はモノを届けてお金をもらう。疲れてようが、眠かろうが、お客には関係ねぇ。大変な仕事だ。だがな・・・そんな大変な仕事でも、たった一つ光るものがあんだ。それは、お客との信用だ。俺たち運送屋が1つ運ぶごとに、信用が1つ増えるんだ。お客はその荷物をまた別のお客に渡して、信用が1つ増える。・・・うまく言えねぇが、そういうこった。」
劉:「だからよ・・・俺ら運送屋は・・・」
劉:「未配(みはい)は許されねんだっ!!」
・・・・・。
AKIRA:(こ・・・この流れは・・・・)
劉:「わりい、珍・・・・もう一回、配車・・・組みなおしてくれるか・・・?」
珍:「兄さん・・・」
AKIRA:(いやいやいや・・・・)
第42話へつづく