太郎と花子

それでは、ここで山田太郎さんに登場してもらいましょう。山田太郎さんは、残念ながら架空の人物です。ではありますが、真面目な好青年です。この山田太郎さんが「ひよこ広場」に入って起業の検討をする迄の話を見ていきましょう。
太郎さんは、Q市に生まれ、工業高校を卒業後にR倉庫という会社に入社しました。

久しぶりの新入社員だった太郎さんは、オジさん達に可愛がられて、毎日楽しく働いていました。入社4年目、今では配送業務を担いトラックを運転するドライバー業務で毎日充実した日々を過ごしています。

そんなある日、先輩のケンジさんの家に遊びに行った時に、奥さまの郁恵さんの知り合いという香織さんに出会いました。太郎さんはドキドキしっぱなしです。こんな素敵な人が彼女だったら。。。恥ずかしがり屋の太郎さんは、そう思いながらも、香織さんに話しかけられると顔を真っ赤にし、小さくハイっというだけで会話らしい会話もなく、その様子をケンジさんがニヤニヤと見ていました。

それから2年。太郎は憧れの香織さんと結婚をし、小太郎という可愛い赤ちゃんを授かりました。

太郎は小太郎と香織さんの幸せを願います。切ないほどに願うのです。
ある夜、太郎は香織さんに言いました。
「あのさ、俺、起業しようと思うんだ」
「え!。。。最近、何だか考えごとをしているのは知ってたけど。あなたに起業なんてできるの。一体何を考えているの?もしかしてケンジさんと同じ仕事なの?あなたとケンジさんは違うでしょ。」「。。。それって、俺が高卒だってこと?」
「そうじゃないけど。。。でも、会社のことなんて何も知らないじゃない。経理や法律とか誰もが出来るって話じゃないでしょ」
「そうなんだ。何度も考えたよ、俺にできるのか?って。それに、起業したからって全部上手くいく訳ないし。でも、ケンジさんの話を聞いていたら、俺でも挑戦出来ることが解ってきたんだ。これ、ザッとでいいから読んでみて欲しい。」と読み込んできた資料を香織さんに差し出しました。

「この仕組みでは、トラックドライバーが起業するんだ。そして、ドライバーの事業が上手くいくように応援してくれるようになっているんだ。起業を目指す人は、まずは、ひよこ広場ってのがあって、いろいろと情報を集めながら、そこで起業の準備をするんだ。勉強したり、同じ、ひよこ達と話をしたり、先輩達から教えてもらったりとか。そこでイケるってなったら起業する。俺はひよこのままで起業が出来ないかもしれないけど、挑戦したいんだ」
「話は解ったわ。けど、ひよこ広場って何処にあるの?そこに行っている間はお給料はもらえないよね?」
「ひよこ広場はココにあるんだ」と太郎はスマホを指差す。
「サイトの中だよ。それに今の仕事を続けながら、晩めし食ってからとか、休みの日に勉強するつもり。ケンジさんや、その仲間の人達もそうやったって。」
「。。。そんなに簡単じゃないでしょ?今の会社や今の仕事は気に入っているじゃない?どうして、起業に取り憑かれちゃったの?」

「。。。俺だって、ケンジさんみたいに家族を幸せにしたいんだ。香織さんは今のままでいい、って言ってくれるけど、もっともっと家族を幸せにしたいんだ。贅沢がしたいんじゃないよ。旅行に行きたいとか、もっと外でメシが食いたいとか、そういうのじゃないよ。香織さんの心配を減らして、小太郎には小太郎が望む勉強や、スポーツや、習い事がさせてやりたいんだ。弟や妹もいた方がいいと思うんだ。そのために俺がもっと頑張りたいんだ。家族のためじゃない。俺がそうしたいんだ。」
「太郎さん、ありがと。気持だけでも嬉しい。じゃあね、こうしようよ。太郎さんは頑張ってひよこの勉強をする。私も一緒に勉強するし、応援もする。それで、私も、これならイケる、って思ったらもう一歩前に進んでみるっていうのはどう?」
「俺は香織さんが反対することはしないよ。それに今の仕事も今まで以上に頑張る。ドライバーっていう自分の仕事を一から考え直しながらひよこになるよ。もし、起業できなくても、この勉強は今の仕事を続けるためにも意味があるから。」
「ありがと、太郎さん。私もこの本を読んでみる。郁恵さんにも話を聞いてみるね」

それでは、次は佐藤花子さんの登場です。
花子さんは、春馬くんという2歳の男の子の母親ですが、訳あって春馬くんのお父さんはいません。
今は、実家で花子さんのご両親と4人で暮らしています。花子さんのご両親は共に仕事をしているのですが保育園の空きが出たら花子さんも働きに出たいと思っています。
花子さんの前職は、小さな運送会社の事務員でしたが、時々、ドライバーが足りなくなるので、免許を持っている花子さんも配送の仕事を手伝ったり、配車の仕事を補助していました。運転はそこいらの男には負けませんが、荷役がある現場は、やはり無理です。軽いと言われている荷物でも荷役がある現場に行くと荷下ろしが出来ません。それに体力の消耗が激しくグッタリしてしまいます。運転は大好きなので、荷役のないダンプの運転手の口はないかとスマホで探しているとき、面白いサイトを見つけました。

花子さんは早速、自分のFBのアカウントから、ひよこ広場に行きました。

先ず、全体の仕組みを熟読しました。次に、先輩達の巣立ちや挫折についての書き込みを夢中で読んでいました。そして、最後にトラガールのグループに行き着きました。ここは女性専用で男性は入れないグループです。このグループを見つけたとき、花子さんは、「ひよこ」から「ぴよ1」に変身しました。グループの女性達と友達になりたかったのです。何人かの仲間に「今日初めて「ぴよ1」になったP市の花子です。運転には自信があり、起業資金もあります。とても興味があるのですが、お話してもらえませんか」とメッセージを送りました。ドキドキしながら返事を待ちましたが、何時間経っても返事はありません。
よく考えたら、この時間はみんな働いているのでしょう。その間に、FBの写真を替えたり、職歴を更新したり、サイトの中を散歩して資料や書き込みを読んでみました。
「この仕組みなら、私も働けるかもしれない。しかも、女性だけのギルド社に入れたら。。。」

書き込みには、交代で保母さんをローテーションする託児ギルド社のことも書かれていました。残念ながら私の住んでいる家の近くには託児ギルド社はないようですが、同じエリア内で、同じようなギルドを望んでいる「ぴよ1」が7人もいることも解りました。
でも、何故か起業には踏ん切りが付かないようです。ひよこやギルド社をサポートしてくれる伝三郎商会は起業に際しては慎重で、荷主や荷物が多過ぎるくらいの所でしか起業を奨めないようです。
このエリア内なら荷物はふんだんに有りそうなのですが、問題は荷役だそうです。女性の腕力では荷役の多い仕事は現実不可能です。
ですから、「荷役をしない運送屋」がどれ程受注出来るのかが解らないらしい。少し悔しいけど、見込みもないのに起業する訳にはいかない。ただ、目処がついたら直ぐに行動が起こせるように準備だけはしておきたい。7人のひよこ達に声をかけて、年収ベースで400万円、毎日1人は事務兼子守りの当番制で提案したところ、私を入れて6人が手を挙げた。

先ずは、会社をつくることに。これも所定の様式が用意されていてギルドスタッフがサポートしてくれた。基本は今までに起業したギルド社のマネをするだけで、ギルドスタッフはチェックする所も予め纏めた資料をくれる。
なんとか出来そうだったので、メンバーでメールしながら自分たちでやることにした。本当に解らなかったら、伝三郎商会が司法書士を斡旋してくれるらしい。それも、基本は電話とメールだし、みんな同じようなパターンなので格安料金でお願い出来るらしい。
でも、これからの人生を賭ける自分の会社だ。どんな仕組みで会社というものが出来るのかは知っておきたい。それに私たちの会社は、他のみんなと違って女性だけの会社だ。人任せで後悔はしたくない。法律とは無縁の人生だったが、G.comの仕組みなら遠回りが少ない。根気さえあればゴールは近づくと信じ、会社設立が出来た。

資本金は120万円、1人20万円の均等出資だ。本社は家賃を節約するため、みんなの通勤、トラック駐車場の確保を考えて、一人暮らしの亜美ちゃんの自宅にさせてもらった。駐車場契約のチェックや事務所選定のチェックシートもギルドスタッフがフォローしてくれる。全て自分達で準備を進めるのだが、やり方を教えてもらえること、迷ったら相談できる所が良い。

そこまで準備が進んだ所で、伝三郎商会のギルドスタッフから連絡が入った。
化粧品会社の物流子会社から「是非、女性ドライバーに運んでもらいたい」という大口の契約が取れそうだ、とのこと。

あくまでも計算上だが、目標の年収は確保できそうだ。メンバー全員がやる気になった。運行管理士の試験は全員で挑戦した。Webサイトにある有川先生のアドバイスと勉強スケジュール表の効果もあり、6人中4人が合格。整備管理者もG.comのネットワーク会社から斡旋を受けることで、運送事業者としての申請準備は全て整った。